書評 〜赤めだか〜
立川談春 著
前々から「傑作」との噂は多々聞いていたけど(どこでだ)
読んでみて、紛うことなき傑作と実感。

「本当は競艇選手になりたかった」の一行から始まる、
師匠立川談志へ入門〜真打昇進に至る過程をつづった自叙伝。

談志をはじめ、「超エリート」であった志の輔、
お茶目な振る舞いの中に「するどさ」を光らせる高田文夫、
天才という名の「天然さ」でわが道を行く弟弟子、志らく、
真打が視野に入ったとき、相談に乗っている
さだまさしの叱咤激励、
これらに加え数々の兄弟弟子達の「人間臭さ」を感じさせる、
エピソードと、与太郎振り(笑)

そして何といっても、師匠談志に対する愛情と、
その談志像の描き方がすばらしい。
弟子という「贔屓目」抜きにしても「揺れ続ける天才落語家」の、
教育論、落語論、そして師弟論というものが、
文章の端々に「驚きと新鮮さ」を以って書かれていて、
「この師匠にしてこの弟子あり」と感じた次第である。

今現在の視点で書いている筈だろうに、
二つ目に入ったあたりから文体が、
だんだんとテンポ・アップしているような感じを受け、
そこには主人公である本人が
リアルタイムで成長しているような感じさえを受けてしまう。
まさに「自叙伝落語」を聴いているようだ。

最終章で、談志の師匠である五代目「柳家小さん」が、
このストーリーに加わってくるのだが、
ここらの描写はとくに素晴らしく、
読んでいて背筋を正してしまうほど(笑)
そして、談志、小さん、それぞれが想うそれぞれへの愛情は、
「感涙」という他ないですなぁ…

本業の落語を彷彿とさせるテンポ感、描写力、
そして良くぞここまで覚えていたなと思えるほどの記憶力。

落語ファンは必読、そうでない皆様方も(笑)
(2008.05.05)
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