書評 〜「私の奴隷になりなさい」〜
サタミシュウ 著
※以下、性的な内容を綴っていますので、
その点を不快に思われる方は、読まれることをお控えください。

その昔「コント55号」という秀逸な、コント・グループがおりました。
(あ、今も)
いうまでもなく、萩本欽一、坂上二郎のお二方であります。

そのコントは、欽ちゃんの「不条理」なツッコミに、
慌てふためく二郎さんのボケとのコントラスト(まさしくコント)が、
「売り」だった訳です。
イジメ抜く欽ちゃん、それに「反応」する二郎さん。
いわば欽ちゃんは「ドS」でしたし、
二郎さんは「ドM」だった訳です。

しかし、二郎さんに、精一杯の「奉仕」を施す欽ちゃんは、
「ご主人様」に尽くす「ドM」であったかも知れませんし、
それを求める、そうでないと「ボケ」を活かせないと、
云わんばかりの態度を見せる二郎さんこそが
「ドS」であったのかも…
と、昔読んだ演芸評論にそんなことが書いてありました。

そんなことを、本書を見て思い出しましたのです。

で、本書、リリー・フランキーさんが、書評を書いています。
ってことが無ければ、恐らく一生読むことは無かったでしょう。

リリーさん曰く…
「SM小説なのに、何故爽やかな匂いがするんだろう」
簡潔なのですが、この本を「ひとこと」で言い終えてマス。

っつーわけで「そういう」小説。
「奴隷」の女性を愛したことから始まる男の物語、
そこに展開される「そういう」場面。
それで想像される世界が本書のテーマってことで
結構なんでしょう。

ぶっちゃけ、本書、読んでいく途中までは、
嫌悪さえ覚えるようなストーリー、語句が連発です。
女性、とりわけ「免疫」の無い方はここで本を「ぽーん」と、
放り投げて、オシマイ。ってことになるんでしょうか。

本書を全体的に読んでいっても、正直ストーリー展開に
無理を感じたり、描写だけでなく心理も「エグく」、
描き出していってもよかったのに…と物足りなさも観じました。

けど、最後まで本書を読みとおすことができたのは、
ストーリーが、あたかも「落語」の世界みたいなのです、この本。
21世紀の「バレ噺」としては秀逸かも知れません。
不条理に続く不条理、けどその本人達にとっては、
「真っ当」である世界と、壮大な「オチ」
主従関係が行きついて、いつかしらそれが「逆転」するその時。
雑ながらテンポ感はありますから、
そこら辺が妙に「落語」っぽいのです。

リリーさん曰く「爽やか」な匂いがするのは、
その関係性の「ドタバタ」が、所謂「エロ小説」のような、
妄想やら固定概念に支配されたものでもない、
「人間臭さ」を感じてのことなんだろうかな?
と思った次第であります。

本書を読み終えて「納得」するしないはその人次第デス。
(私も、納得はしてませんケド)

これ…誰か、落語にしてくれませんかねぇ(爆)
(2008.01.20)
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