よしだたくろう・オン・ステージ!!ともだち
(オリジナルは1971年発売)
  1. おろかなるひとり言
  2. マーク II
  3. もう寝ます
  4. 老人の詩
  5. 私は狂っている
  6. 何もないのです
  7. やせっぽちのブルース
  8. されど私の人生
  9. わっちゃいせい
  10. 夏休み
  11. 面影橋
  12. イメージの詩
  13. ともだち
これを書いている今、拓郎さんが体調不良にて、
ツアーを延期されるというニュースが流れています。
その前にも、うつ病を自身のサイトで告白してたり、
コンディションが相当優れないのでしょうか、心配です。

そんな拓郎さんの、初期の魅力、醍醐味を感じられるアルバムを
エンカレッジな気分にて。
平仮名の「よしだたくろう」から1枚を選ぶんだったら、
コレなんです。私の場合。

ま、ライヴ・アルバムです。
弾き語りをベースに所々で”ミニ”バック・バンドが入る構成で、
ジャケットこそ「エレック・レコードのフォーク・アルバム」
みたいな感じですが、カバー曲(8.9.11)あり、
「夏休み」「マークU」という”フォーキーな”有名曲あり、
自作曲のパロディ(4)ありと、聴きどころは多いですし、
MCが「青さ」を感じさせつつも、流暢なテンポで、
既に拓郎チックな世界を伺わせつつ、
随所に「重要なキーワード」を
挿みこんでいく”ステージさばき”は当時から上手いなと、思ってしまうものであり、
その部分も含めて最後まで聴き通せてしまう作品に仕上がっています。

斉藤哲夫の「超」名作M-8や、六文銭のこれまた「超々」名作M-11
(原曲タイトルは「面影橋から」)は、原曲をなぞりつつも、
完全に「自分の曲」としている肉体性に心が震えます。
一方レイ・チャールズの「ホワッド・アイ・セイ」を、
チラっとカバー(1コーラスだけ)したM-9は、
もうちょっと聴きたい!と思ってしまう作品です。
アマチュア自体の拓郎が、バンドを組んで、
R&Bやロックのカバーに勤しんでいた頃の「片鱗」を感じさせるものであり、
カバーの扱いの上手さは、このアルバムの「発見」であります。

”ミニ”バック・バンドの編成は、ギター(エレキ)、ベース・ギター、
それに拓郎の”リズム”ギターという布陣ですので、
アコースティック編成のバンドをやっている人は、
実に勉強になると思います、要は”リズム”ギターであるってことを、
十分学べますし、拓郎のカッティングは結構グルーヴィーですよ。
そして、このカッティングに乗っかる”声”がまだ細いけど、
爆発しそうでしなくて、けどしそうで...というギリギリっぽいところが、
実にカッコいい。この編成でグルーヴィーに感じるのは、
やはり、歌唱力ってのもありますですよ。

最高の聴きどころは、やはりM-12になるでしょうか。
歌詞に対して「拍手」を送る観客が時代を感じさせますが、
本当の意味で「哲学的」な言葉を浴びせつつも、
同時に”客観視”という名の「達観」さえ感じ得てしまう、
それは、あたかも彼自身が、モチーフとして意識したであろう、
そう、このアルバムのインナーに書いてある
「ボブ・ディランを意識する」彼が、既にこの曲で、
そのディランを完全に「射程圏内」捉えて、
そして、そのスタンスでさえも「決別」を告げて、
意識した(で、あろう)、「彼」と同じく、
既に、フォークのスタンスで語れるべくもない場所へと、
走っていっているであろう、拓郎自身を「歌って」いるんであろう、
だから茶化しつつも、マジであるという、
どこか突き放して、けどエモーショナルである、
それは、M-1で歌っている、
ザ・ビートルズの「The Fool on The Hill」チックな
歌詞世界が、「もう、この場所にいたくはない」
という心境を彷彿とさせます(僕個人の考えとして)
その、作品が産み出す「魔物」的な影響に、
「埋没」されない姿勢がカバー曲の妙を生み出し、
また選曲された楽曲も普遍的な意味合いを持つようなものが
多くなってるんだろうと思っています。
M-1、M-8の歌詞なんて、今でも「撃たれ」たりしますからね。

そして、最後のM-13、当時の”友人”と運命的な別れをした
そんな情感から創られた歌らしいのですが、
明るいタッチなのに、本当にやるせなさを感じさせ、
けど本当に良い曲だなぁって気分にさせてくれます、
これが最後の曲ってのがいいんですよねぇ。

当時の「荒れた」精神状態を歌うM-5や、
放送コードに引っかかるであろうMC辺りが引っかかって、
なかなかCD化されなかった模様ですが、これがCD化されたんだったら、
日本音楽史上に残る名盤「今はまだ人生を語らず」
(これも”言葉”がひっかかって、一瞬だけCD化されたけど、
今は発売されていません)も再発してもいいでしょう。
(要は「ペニーレーンでバーボンを」だけでしょ?ねぇ?)

高校ン時、中古レコード屋で出会ったこのアルバム、
久しぶりCDで買いなおし、聴きました。
やっぱ初期の「たくろう」はこれだな、私。
(2007.09.02)
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